家賃収入のある不動産を相続・遺産分割について弁護士が徹底解説

収入

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遺産にアパート・マンションなどといった収益不動産が含まれている場合、居住用の不動産とは取り扱いが異なります。相続における建物・土地の評価額は、相続税の計算や遺産分割の際に重要な役割を担うため、間違った評価をすると損をする恐れがあるのです。

損をしないためには、収益不動産と居住用不動産との評価方法の違いを理解しなければなりません。また、収益不動産から発生する家賃収入などについても相続前後で取り扱いが異なる点に注意が必要です。

というわけで今回は、収益不動産の評価方法についてと、相続前後で発生する家賃収入の取り扱い等について詳しくご説明していきます。

賃貸物件の評価について

まずは、収益が発生している賃貸物件の評価についてご説明します。賃貸物件の評価を理解するためにも、相続における不動産の評価額についての基礎知識をつけましょう。

評価額とは

収益不動産であっても居住用不動産であっても、相続の際は遺産分割の前提として、不動産の評価額を必ず算定しなければなりません。不動産評価額の算定については、固定資産税評価額や不動産会社・不動産鑑定士に査定など様々な方法があります。

どの方法で評価額を算定すべきかについては、個々の事情によっても異なることから、事前に弁護士等に相談したほうが的確なアドバイスをもらえるでしょう。

以下では、一般的な評価額の算定方法についてご説明していきます。

建物・土地の評価額

相続した土地と、その土地上に建物がある場合、それぞれ分けて評価すべきとされています。

建物の評価方法は、基準年度の固定資産税評価額に評価倍率を乗じて求めるのが一般的な方法です。また、建物の固定資産税評価額というのは、新築の際に一度評価され、その後は3年に1度評価替えが行われ、年々評価額が減少していきます。ただし、評価額が0になることはなく、最終的に2割程度が残る仕組みになっているので注意しましょう。

土地の評価方法は、地目ごとに評価方法が分かれているため注意が必要です。もっとも一般的な地目である宅地の場合は、市街地については路線価方式が用いられ、それ以外の地域については倍率方式で評価することとされています。評価の計算式は以下のとおりです。

  • 路線価方式 評価額=路線価×画地調整率×地積(平方メートル)
  • 倍率方式  評価額=基準年度の固定資産税評価額×地域ごとに定められた評価倍率

マンションの評価額

マンションの評価額は、そのマンションの市場価値や建物の築年数や状態、周辺環境などを考慮して、不動産会社や不動産鑑定士によって評価額を算定してもらうことが多いです。

なお、マンションといった収益不動産の場合、利回りも考慮して評価額を算定する方法もあり、居住用不動産よりも高い評価額になることもあります。収益不動産を相続する側としては評価額を可能な限り下げたいですし、相続しない側としては評価額を上げたいといった思惑もあり、相続人同士でトラブルになるケースもめずらしくはありません。もし、収益不動産の評価額について争いがあるのであれば、相続問題に強い弁護士に相談すべきでしょう。

 

賃貸物件の状況の把握

収益不動産は、相続すると被相続人と賃借人との契約関係が引き継がれます。

よって、可能であれば事前に賃借物件の状況を把握しておくのが好ましいです。たとえば、賃借人の氏名や賃料、賃貸期間、賃料の滞納や敷金の有無などを把握しましょう。その他にも、賃貸物件の現況がどのような状態なのか、修繕の必要があるのか等についても把握しておくのが大切です。こうした賃貸物件の状況を把握しないまま収益不動産を相続してしまうと、賃借人とのトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあるため注意が必要です。

家賃収入が相続対象になる場合について

家賃収入が相続対象になるかについては、家賃収入を「相続開始前」、「相続開始から遺産分割までの間」、「遺産分割後」の3つに分けて考えなければなりません。

以下にて、場面ごとに詳しくご説明します。

相続開始前の家賃収入

相続開始前の家賃収入は被相続人の財産となります。よって、相続開始前の家賃収入は相続財産として取り扱われるべきと考えられています。一般的に家賃収入は、相続が開始する前は被相続人名義の預金口座へ振り込まれるのが一般的です。振り込まれた家賃収入は、預金債権として取り扱われるため、相続財産として遺産分割の対象となります。収益不動産を相続した者が過去の家賃収入についても取得できるわけではないので注意が必要です。

相続開始から遺産分割までの間に生じた家賃収入

相続開始から遺産分割までの間に生じた家賃収入は、法定相続分の割合に応じて相続人がそれぞれ取得することになっています。以前まで、相続開始後に発生する家賃収入の取得については争いがあったのですが、相続開始後の収益不動産の家賃収入や銀行の利息などは遺産分割の対象にはならないといった最高裁判所の判断が出ています。たとえば、収益不動産については通常、管理費も発生します。この管理費についても、法定相続分の割合に応じて相続人がそれぞれ取得する取り扱いになっています。よって、相続開始から遺産分割までの間に生じた家賃収入や管理費は、収益不動産を相続した者が後から取得できるわけではありません。

遺産分割後に生じた家賃収入

遺産分割後に生じた家賃収入は、収益不動産を相続した相続人が取得していきます。よって、遺産分割成立後の家賃収入は、相続財産には含まれません。一方で、遺産分割には遡及効といって、収益不動産を相続した相続人には相続開始時に遡って収益不動産を取得した取り扱いがされます。一見すると、相続開始時点から収益不動産取得までの期間の家賃収入についても取得できるように見受けられます。しかし、前述したように、後から家賃収入を取得できるわけではありません。不動産と家賃収入はまったく別物として取り扱われるため、相続開始から遺産分割成立前までの家賃収入については取得できない点に注意しましょう。

遺産にアパート・マンションなどの収益不動産が含まれている方は弁護士にご相談ください

遺産にアパート・マンションなどの収益不動産が含まれている場合、一般的な居住用不動産の相続より遥かに複雑なものとなります。さらに、実務上の遺産分割においては個々の事情によってケースバイケースな対応も求められることから、豊富な専門知識だけでなく実務経験も求められます。当事務所は、弁護士としての豊富な専門知識はもちろん、過去に多数の相続案件をこなしてきた実績があります。もし、遺産にアパート・マンションなどの収益不動産が含まれているという方は、まずは当事務所にご相談ください。






    この記事の監修者

    監修者:西村啓聡

    弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

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    注力分野

    岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

    経歴

    東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。