遺産・相続人調査

遺産・相続人調査

1、相続人調査・相続財産調査について

被相続人の死亡により相続が開始し,相続人が複数いるにもかかわらず遺言がなく,相続財産の承継先が不明確な場合,相続人全員が参加する遺産分割協議によって遺産分割を行う必要があります。

遺産分割協議には相続人全員が参加しなければならず,またすべての遺産の分配方法を確定する必要があります。

相続人や相続財産に不足や不備があった場合には,遺産分割協議をやり直し,法廷相続人全員の合意を取った上で,遺産分割協議書を再度作成しなければならないからです。

したがって,遺産分割を行う前提として,①そもそも誰が相続人となるのか,そして②遺産として何があるのかを調査しなければなりません。

2、相続人調査

被相続人の預金を引き出したり,保険を解約したりするためには,銀行や保険会社にご自身が相続人であることを証明する必要があります。

また,被相続人の不動産の名義を変更する場合にも,法務局に相続人であることを証明できる資料を提出しなければなりません。

そのため,相続の手続きは,通常,相続人を確定するところからスタートします。

相続人に漏れがあった場合には,遺産分割協議が無効になるため,そのような事態になることを防ぐためにも,相続人の調査は非常に重要な手続きになります。

相続人調査は,被相続人の戸籍を収集することから始めます。

具体的には,亡くなった方(被相続人)が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本,除籍謄本,改正原戸籍等を揃えることが必要です。

戸籍は,被相続人が婚姻や,転籍,法改正などにより都度新しく作成されますが,その際に既に抹消された情報は新しい戸籍には記載されないため,一つの戸籍では,相続人全員を把握することができません。そのため,婚姻や転籍を繰り返している被相続人の場合は,膨大な上記戸籍謄本類が必要になることもあります。

もっとも,一口に出生から死亡までの戸籍謄本等を集めるといっても,実際のところ,出生まで戸籍をたどっていく作業は容易ではありません。

これらの書類を取得するためには,本籍地のある市役所等に請求する必要があります。

現在から過去へと遡って取得する過程で,複数の市町村長役場で戸籍謄本等を取得しなければならない場合も多く,手間と労力のかかる作業になります。

また,古い除籍謄本等を取得する場合には,記載されている字の判読が難しいこともありますし,あるいは戦争で戸籍が焼失しており,取得が不可能ということも稀ではありません。

ご自身で戸籍等を取得することが難しいと感じられる場合には,弁護士がご依頼者様に代わって必要な戸籍等を請求することができます。

トラブルなく相続を終えるためにも,まずは弁護士に相談されることをお勧めいたします。

相続人調査が完了し,すべての相続人が明らかになった後には,「相続関係説明図」を作成します。

3、相続財産調査

相続人が確定していても,相続財産が確定しなければ,遺産分割の協議を進めることができません。

相続財産に漏れがあると,遺産分割協議が無効になる場合もありますから,注意が必要です。

被相続人と同居されていた方が相続人になるケースであれば,被相続人の財産をある程度把握していた場合が多いため,相続財産の調査にさほどの困難は伴いません。

一方,被相続人と同居していなかった場合には,財産調査に時間がかかることがあります。

調査の方法自体が難しいことに加え,被相続人と同居して被相続人の財産管理を行っていた相続人が,他の相続人に対して相続財産を明確に教えてくれないこともあります。

そのような相続人間でのトラブルから,調査が円滑に進まない事態が少なからず生じることも,財産調査の難しいところといえるでしょう。

ただ,相続税の申告期限もあるため,財産調査は早期に済ませることが重要になってきます。

相続財産調査では,被相続人の財産を調査し,財産目録を作成します。

相続は,被相続人のプラスの財産のみならず,マイナスの財産も受け継ぐことになります。

そこで,プラスの財産のみならず,必ずマイナスの財産(借り入れ,保証債務など)についても調べて把握することが重要となります。

具体的には,①預貯金は,預貯金通帳,銀行,②土地及び建物は,全部事項証明書,固定資産税評価証明書,賃貸借契約書,③貸金,売掛金は借用書など,④株式は,証券会社の情報,確定申告書等の書類,生命保険は保険証書を参考に財産を調査します。

以下,主要な項目ごとに財産調査の方法を簡単に説明いたします。

(1)現金・預貯金

現金については,まずは被相続人の自宅内を探しましょう。

預貯金については,通帳やカードから金融機関に問い合わせることが可能ですし,これらがない場合には,金融機関に「残高証明書」の発行を依頼することになります。

(2)不動産

固定資産税の納税通知書がある場合には,それによります。この毎年4月から6月に届く固定資産税の納税通知書には,不動産の面積や評価額が一覧になって記載されています。

納税通知書が見つからない場合には,役所で固定資産課税台帳(名寄帳)の写しをもらい,そこから調べることになります。

ただし,固定資産課税台帳(名寄帳)には,当該市区町村内にある不動産に関する情報のみが記載されていますから,被相続人が全国各地に不動産を所有している場合には,それぞれの市町村に請求する必要があります。

(3)負債(借金)

債権者からの通知書,カード会社からの支払い請求書,税金未払いの督促状等から,被相続人の借金を特定していくことになります。

(4)生命保険

保険証書(保険証券)を探しましょう。見当たらない場合には,保険証書(保険証券)の再発行について,保険会社に問い合わせをしていくことになります。

(5)抵当権・借地権・賃借権

抵当権の設定については,登記事項証明書の記載を確認する必要があります。

借地権・賃借権については,契約書を探しましょう。見当たらない場合には,登記事項証明書(登記簿謄本)の交付を請求することが考えられます。


財産調査を自分で確実かつ網羅的に行うことに不安がある方は,弁護士にご相談・ご依頼されることをお勧めします。

この記事の監修者

監修者:西村啓聡

弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

注力分野

岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

経歴

東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。

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