遺留分侵害額請求を受けた場合の対応を弁護士が解説

「いきなり遺留分侵害請求が届いた…」

「遺留分を請求されてもどう対応すればいいかわからない…」

遺留分という聞き慣れない言葉もあってか、このような悩みを抱えている方はたくさんいらっしゃいます。そこで今回は、遺留分の基本についても触れつつ、遺留分侵害額請求を受けた場合の対応について、相続問題に精通した弁護士が解説していきます。

 

遺留分侵害額請求とは

まず、遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められている、最低保障された相続財産の取得分のことです。被相続人の配偶者、子ども、もしくは子の代襲相続者であれば、法定相続分の2分の1が遺留分と定められています。そして、被相続人の両親(直系尊属)であれば、法定相続分の3分の1が遺留分と定められています。

被相続人の遺言や生前贈与などによって、遺留分に満たない財産しか相続できなかった兄弟姉妹以外の法定相続人は、侵害してきた相手に対して、自身の遺留分を主張することが可能となっていて、これが「遺留分侵害額請求」です。

 

遺留分侵害額請求された場合に確認するべきポイント

遺留分侵害額請求をされた場合は、以下の4つのポイントを確認しましょう。

①相手方が遺留分を主張できる正当な権利を持っているか確認する

⓶遺留分侵害額請求の時効を確認する

③遺留分の算定が正しいか確認する

④相手方が特別受益にあたる生前贈与を受けているのか確認する

①相手方が遺留分を主張できる正当な権利を持っているか確認する

遺留分は、相続人の立場であれば誰でも請求できるわけではありません。被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、まずは相手が遺留分を主張できる正当な権利を持っているか確認しましょう。確認の際は、相手の主張を鵜呑みにするのではなく、戸籍謄本にて確認してください。また、相続欠格や相続廃除によって相続権が剥奪されている相続人もいるため、相手の主張が間違いないのかしっかりと確認しましょう。

 

②遺留分侵害額請求の時効を確認する

遺留分侵害額請求は、1年の消滅時効と10年の除斥期間があります。

消滅時効の始期は、自身に相続があったことを知ったとき、そして、遺留分が侵害されていることの両方を知ったときからとなります。遺留分侵害額請求されたタイミングで、すでに1年が経過していた場合は、消滅時効となります。時効援用の手続きを踏みさえすれば、相手の請求に応じる必要はありません。

また、相続の開始等を知らなかった場合は、被相続人が亡くなってから10年を過ぎると権利が自動的に消滅します。遺留分侵害額請求をされた時点で、すでに被相続人が亡くなってから10年が経過していれば、こちらも相手の請求に応じる必要はありません。

 

③相手方が特別受益にあたる生前贈与を受けているかの確認をする

相手方が被相続人から特別受益にあたる生前贈与を受けていないかどうか確認しましょう。

特別受益とは、遺贈や婚姻、または生計のための贈与のことを指します。簡単に言えば、被相続人から特別にもらっていた財産のことです。

もし、特別受益にあたる贈与があった場合、その分を相続財産に加え、改めて法定相続分を計算します。そこから、贈与分を差し引いたものが、相手方の正確な相続分となります。

この計算をすることで、相手方の相続分を適正な金額に引き下げることができるため、遺留分侵害が発生しなくなるケースもめずらしくはありません。

 

④遺留分の算定が正しいか確認する

請求されている遺留分の算定が正しいかどうかについては、必ず確認しましょう。

ただし、遺留分侵害額を正確に算定するには、相続財産の評価額や生前贈与の有無などを確認しなければならず、計算が複雑になるケースがほとんどです。特に、不動産の評価については、どの方法で評価するかによって金額が大きく変わることもあります。よって、遺留分の算定については、ご自身で計算するのではなく、可能であれば弁護士にしてもらうことを強くおすすめします。

 

遺留分の請求を退けるまたは減額する方法

遺留分の請求を退けたい、または減額したい場合は、以下の方法を参考にしてください。

 

遺留分の請求を退ける方法(遺留分を渡さない方法)

遺留分の請求を退けたい場合は、事情を相手方に話して、請求そのものを取り下げてもらう交渉をするという方法があります。遺留分の請求をしてきている相手と接点がほとんどない場合、相手方はこちらの正確な事情を把握していない可能性が強いです。

遺留分の請求は、2019年7月1日以降に亡くなった方の相続については、金銭で支払うこととなっています。相続財産が不動産しかないなど、お金を用意できない事情があれば、その旨を相手に伝えてみましょう。

 

遺留分の請求額を減額する方法

遺留分の請求を退けようとしても、相手が応じてくれない場合、そして相手が正当な遺留分権者である以上、支払いはするしかありません。しかし、請求額を減額することは可能です。

遺産の評価額を減額する方法

遺産の評価額を減額することで、支払額を抑える方法をうまく使いましょう。

遺産を評価する方法は1つではありません。遺留分の算定において、遺産全体の評価額を減らすことは、そのまま遺留分を引き下げることになります。中でももっとも低く抑えることができる評価方法を主張し、少しでも遺留分の請求額を減額させましょう。

 

 

遺留分侵害額請求は無視しないようにしましょう

遺留分侵害額請求をされた際、相手の請求を無視することだけは一番やってはなりません。

なぜなら、遺留分の請求は正当な権利であり、相手が求めてくる以上、支払いは必ずしなければなりません。もし、支払いをしないでいれば、いずれ裁判を起こされる可能性があります。それでも無視を続けていれば、最終的には強制執行が認められて、財産を差し押さえられてしまうことになりかねません。となれば、本来支払うべき適正な金額ではなく、相手の主張だけが認められた金額を強制的に差し押さえられることになってしまいます。

余計な損失を招かないためにも、相手の請求を無視するのではなく、話し合いで解決させることが重要です。

 

遺留分侵害額請求をされた場合は弁護士にご相談ください

遺留分侵害額請求をされた場合は、相手の主張が正当かどうかしっかり確認する必要があります。もし、正当なものであれば、遺留分の支払いをしなければなりませんが、減額できる可能性は十分あります。相手からの請求をそのまま鵜呑みにするのではなく、必要な対応を取って財産を守りましょう。とはいえ、遺留分の算定は計算が複雑な上に、遺産の評価についても専門知識が必須となります。どうしても個人で行うのが不安な方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、遺留分の算定だけでなく、相手との交渉をすべて任せられますし、万が一にも調停や裁判へと発展しても、安心して任せられます。

当事務所では、相続問題に精通した弁護士が在籍しておりますので、まずは法律相談のご予約から、お気軽にご連絡いただければ幸いです。






    この記事の監修者

    監修者:西村啓聡

    弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

    西村写真

    注力分野

    岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

    経歴

    東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。