葬儀費用や借地権って相続できる?遺産分割の際に悩みがちな財産6選を弁護士が解説
「これって遺産分割の対象になるのかな?」
遺産分割の際に、このような疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。一般的に相続財産といえば、現金や不動産を思い浮かべる方がほとんどです。
しかし、遺産分割の対象となる相続財産はそれだけではありません。
そこで今回は、どの財産が遺産分割の範囲に含まれるかわからないといった疑問を抱えている方に向けて、特に質問が多い6つの財産について弁護士が詳しく解説していきます。
目次
そもそも遺産分割って何?
そもそも遺産分割とは、民法によって定められた法定相続人が全員参加し、被相続人が生前保有していた財産の分け方を決定する手続きのことです。
そして、分け方を決定する際の話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。なお、被相続人が生前に作成していた「遺言書」がある場合は、原則として遺言書の内容どおりに財産を分けることになっています。
遺産分割は、上記いずれかの方法で行われることになっています。
遺産分割の際に気になる6項目
遺産分割の際、以下の6項目については「相続財産に含まれるのか」という点で非常によくご質問いただきます。
- ①ゴルフ会員権
- ②借地権
- ③動産
- ④葬儀費用
- ⑤株式
- ⑥貸金債権
ゴルフ会員権を遺産分割できますか
ゴルフ会員権とは、会員制のゴルフ場を利用する権利であって、株式・手形といった有価証券ではありません。会員とゴルフ場との間でのみ有効となる権利証券となっています。
ゴルフ会員権は、法的には財産権の一形態と見なされるため、遺産分割の対象です。
ただし、ゴルフ場の規則や契約によって制限される場合がある他、会員の死亡によって資格を喪失すると定めているケースもあり、遺産分割を行う際には注意が必要です。
また、ゴルフ会員権は不動産とは異なり、共有名義で相続するといったことはできません。相続人が複数人いる場合は、誰がゴルフ会員権を相続するかを取り決める必要があります。
借地権を遺産分割できますか
借地権とは、土地の持ち主から土地を借りて使用する権利のことです。一般的には、借りた土地の上に自分の家を建てているケース(建物所有目的)がほとんどです。
そのため、借地権は遺産分割の対象となります。
基本的には相続する際に地主の許可を取る必要はありませんし、報告する義務もありません。相続した者は、従来の契約通り借地権を行使できます。ただし、相続した借地権を売却したい場合は、地主の許可が必要となる点に注意です。
なお、必要な相続手続きは、借地上の建物の名義変更登記をするだけです。借地権の名義変更までする必要はありません。賃借権の登記は建物の名義変更することにより、一緒に名義変更されたことになります。
ただし、稀に借地権が登記されている場合がありますので、その場合は借地権の名義変更の登記申請が必要となる点に注意しましょう。
動産を遺産分割できますか
動産とは、簡単に言えば不動産以外の財産を指していて、基本的には遺産分割の対象となっています。
主な動産として、現金、株式、債券、車両、家財道具などが相続財産として取り扱われることになっています。
動産を遺産分割する場合は、単純に相続人の数で等分できるものと、そうでないものがあることを考慮しなければなりません。
たとえば、現金であれば遺産分割はそれほど難しくはありません。
しかし、車両や家財道具など、切り分けることができない動産の場合は、
・動産ごとに取得する相続人を決める「現物分割」
・取得する相続人が他の相続人に調整金を支払う「代償分割」
・取得する相続人が代わりの財産を他の相続人に渡す「代物分割」
・動産を売却した代金を分ける「換価分割」
といった方法で遺産分割を行います。
相続人全員が納得できる分割方法でなければ遺産分割協議は成立しません。分割方法で揉めそう、すでにトラブルになっているという場合は早急に弁護士へ相談することをお勧めいたします。
葬儀費用を遺産分割できますか
亡くなった際にかかった葬儀費用については、遺産分割の対象外となります。
ここでいう葬儀費用とは、葬儀社に支払った費用、火葬・納骨の費用、お墓の購入費用、お布施にかかった費用などを指します。
そもそも葬儀費用というのは、被相続人が亡くなった後に発生することからも相続財産に含まれる性質ではありません。
しかし、葬儀費用については負担者が法律で定められているわけではないため、「誰が負担するのか?」といった具合に相続人間でトラブルになるケースが多くなっています。もし、トラブルになりそうな場合は、遺産分割協議の議題の1つとして葬儀費用を含むことで、相続人間で調整するのが良いでしょう。
もちろん、故人の遺産(負債)がどれくらいあるのかといった問題もありますので、上記のように事前に話し合う際には相続人の範囲や相続財産について調査を完了させておくことが重要です。
株式を遺産分割できますか
上述した通り、株式は動産の一種であるため遺産分割の対象となります。
ただし、株式の権利を行使するためには、取得した者の氏名等を株主名簿に記載しなければ、会社や第三者に対して権利を主張できないとされています。よって、遺産分割だけでなく、株主名簿の書き換えが必要となってしまう点に注意が必要です。
なお、遺産分割前の段階では、相続人全員が株主を共有している状態となっています。この場合、株式の権利を行使するには、相続人の中から権利行使をする1名を定め、株式会社に通知しなければならないとされています。
株式の相続は非常に複雑なルールが伴いますので、こちらも弁護士など法律の専門家に相談すべきでしょう。
貸金債権を遺産分割できますか
貸金債権とは、債権者が債務者に対して返済請求する権利のことです。
たとえば、被相続人が友人に金銭を貸し付けていた場合、貸金債権を行使することで、友人に対して返済請求することができます。
この貸金債権は、当然に遺産分割の対象になるものではないものの、相続人全員が合意すれば遺産分割の対象となります。
ただし、貸金債権の中身を把握するのが困難な場合は注意が必要です。上記の例をそのまま使うのであれば、被相続人と友人との間に契約書といったものがなく口頭契約であった場合、貸金債権の中身を把握するには友人の協力が必要となります。しかし、友人が協力してくれないケースも多く、回収そのものが困難になるケースは決してめずらしくはありません。
こういった場合は、個人で何か行動を起こす前に、弁護士に相談することを強く推奨します。
遺産分割でお悩みの方は西村綜合法律事務所にご相談ください
以上のとおり、遺産分割の対象となる財産は多岐に及びます。上記の6項目以外についても、気になる財産がある方は多いのではないでしょうか?もし、こうした疑問を解決したい、遺産分割で悩んでいるといった方は、ぜひ西村綜合法律事務所にお越しください。
遺産分割は正しい知識がないまま行ってしまうと、後で取り返しのつかない事態を引き起こす危険があります。あなたの財産を守るためにも、ぜひ当事務所に一度ご相談ください。