成年後見・任意後見
成年後見制度は、精神的な障害や高齢などで自己の意思決定能力が制限された方々をサポートし、法的な保護を提供する重要な法的枠組みです。
本記事では、成年後見制度を利用する手続きや流れ、注意点、メリットについて詳しく解説し、後見人の選定から成年後見制度の開始までの一般的なプロセスを説明します。また、弁護士に依頼するメリットや弁護士の役割についても紹介します。
目次
成年後見制度とは
どんな役割の制度?
成年後見制度は、精神的な障害や高齢などで自己の意思決定能力が制限された人(被後見人)のために設けられた制度です。後見人が被後見人の法律行為や財産管理をサポートし、身上監護を行います。被後見人の利益を守りながら、生活や財産の安定を図ることがその役割です。
法定後見制度とは
法定後見制度は、家庭裁判所によって被後見人に後見人を選任する制度です。家庭裁判所が被後見人の意思能力や状況を調査し、必要に応じて後見人を選定します。適切な後見人が選ばれ、被後見人の利益が守られることが特徴です。
任意後見制度とは
任意後見制度は、被後見人が自ら後見人を選任する制度です。被後見人自身や家族、弁護士などの信頼できる人物を後見人として選ぶことができます。被後見人の意思を尊重し、自らの選んだ後見人によるサポートを受けることが可能です。
成年後見人にできること
被後見人の財産管理
成年後見人は、被後見人の財産管理を行います。これには銀行口座の管理、不動産の処分、財産の運用・保護、税金の支払いなどが含まれます。成年後見制度によって被後見人の財産が適切に管理され、財産の安全性と利益が保護されます。
被後見人の身上監護
成年後見人は、被後見人の身上監護を担当します。例えば、医療に関する契約の締結、介護に関する契約の締結、要介護・要支援認定の申請、住居に関する契約の締結、見守り行為がこれに該当します。
成年後見制度を利用するまでの流れ
成年後見制度を利用する際、弁護士に依頼することでスムーズに進めることができます。弁護士は法律の専門知識と経験を持ち、成年後見制度の手続きや要件に精通しています。以下は、弁護士への依頼から成年後見制度の開始までの一般的な流れです。
- (1)弁護士への相談・依頼: 成年後見制度に関する相談や手続きをするため、弁護士に相談し依頼します。
- (2)被後見人の状況調査: 弁護士が被後見人の状況を調査し、後見の必要性や適切な後見人の選定を行います。
- (3)家庭裁判所への申立て: 弁護士が家庭裁判所に成年後見制度の申立てを行います。申立てには必要な書類や証明書の提出が必要です。
- (4)後見人の選定と決定: 家庭裁判所が被後見人の状況や意思を考慮し、適切な後見人を選定・決定します。
- (5)成年後見の開始: 家庭裁判所の決定に基づき、成年後見制度が正式に開始されます。
成年後見制度によって進めやすくなることの例
住居の管理がしやすくなる
成年後見制度を利用することで、被後見人の住居の管理がしやすくなります。後見人が家屋や不動産の手続きを代行し、必要な修繕や契約の管理を行います。また、住居の移動や介護施設への入所などが必要な場合にも、後見人のサポートを受けることができます。後見人は被後見人の意向や生活状況を考慮しながら、適切な住居環境を確保するための手続きや調整を行います。
銀行での手続きがしやすくなる
成年後見制度の下では、後見人は被後見人の財産管理を担当します。これには銀行口座の管理や取引手続きが含まれます。後見人として認められた場合、銀行との間での手続きがスムーズに進められるようになります。例えば、預金の引き出しや預金口座の開設、振込手続きなどを代行することが可能です。後見人が被後見人の利益を守りながら、適切な財務管理を行います。
遺産分割協議を進めやすくなる
成年後見人が被後見人の利益を代表し、遺産分割に関する意思決定や手続きを支援することができます。これにより、遺産相続に関わる紛争やトラブルを未然に防ぎやすくなります。
成年後見制度の注意点
一度開始した成年後見制度を中止することは難しい
成年後見制度は一度開始されると、簡単に中止することができません。
成年後見制度は、被後見人の利益や安全を守るために設けられている制度であり、無理な解除が容易に行われるものではありません。解除の申し立てには、被後見人の状況や利益を考慮した適切な理由が必要です。例えば、被後見人が自立して財産や身上の管理が可能になった場合など、解除の理由がある場合に家庭裁判所は解除を検討します。
そのため、成年後見制度を利用する前によく考え、長期的な視野で判断することが重要です。
家庭裁判所への報告が年に1回必要になる
成年後見制度を利用する場合、後見人は年に1回、家庭裁判所への報告義務があります。
報告書には被後見人の生活状況や財産管理の状況、支出や収入の明細などを記載する必要があります。この報告書は、成年後見制度の透明性と被後見人の利益保護を確保するための重要な要素です。
生前贈与がしにくくなる
成年後見制度を利用すると、基本的には被後見人の生前贈与は制限されます。
生前贈与は、財産を将来的に相続する予定の相手に対して、現在の所有者である被後見人が財産を贈与する行為です。
成年後見制度では、被後見人の財産管理を行う後見人が存在し、その役割は被後見人の利益を保護することにあります。生前贈与は、財産の一部を他者に移転させる行為であり、被後見人の財産の減少や不利益を招く可能性があるため、制限されることがあります。
ただし、生前贈与が完全に禁止されるわけではありません。家庭裁判所の許可を得れば、一定の条件の下で生前贈与を行うことができる場合もあります。家庭裁判所は、被後見人の利益を最優先に考慮して判断を下します。
したがって、成年後見制度を利用する場合には、生前贈与に制限があることを留意しておく必要があります。具体的な事情や条件によっては、家庭裁判所の承認を得ることで生前贈与が可能な場合もあります。成年後見制度と生前贈与に関する詳細な情報や具体的なケースについては、弁護士に相談することをおすすめします。
成年後見制度を弁護士に任せるメリット
中立で公正な後見が可能です
弁護士に成年後見制度を任せることで、中立で公正な後見が実現します。弁護士は法律の倫理規定に基づき、被後見人の利益を最優先に考えながら行動します。家族や関係者との利益衝突や感情的な要素を排除し、被後見人にとって最善の利益を追求します。
複雑な手続を手放せます
成年後見制度にはさまざまな手続きや書類の提出が必要です。弁護士はその手続きを代行し、適切な書類を作成や提出することで、被後見人や関係者の負担を軽減します。弁護士は手続きや書類の作成に慣れており、正確かつ効率的に進めることができます。また、法的な専門知識を持つ弁護士が適切な手続きを行うことで、後々のトラブルや問題を防ぐことも期待できます。
紛争の予防とスムーズな解決をサポートできます
成年後見制度の中で発生する紛争や意見の食い違いを予防し、円滑な解決に向けて弁護士がサポートします。弁護士は中立な立場から関係者とコミュニケーションを図り、解決策を見つけるための調停や交渉に参加することができます。紛争が生じた際には、弁護士が法的なアドバイスや手続きのサポートを行い、公正な解決を促進します。