早めに進めたい土地の相続手続きや相続税について岡山の弁護士が解説

ご家族がお亡くなりになり,相続が発生した場合,被相続人が所有していた土地をどのように処理をするのかという問題が発生します。

通常,被相続人の所有していた土地は,登記簿上,被相続人名義になっているはずです。被相続人がお亡くなりになった場合,なんらの手続きも取らないと被相続人の土地はいつまでも被相続人名義のままになります。いつまでも土地の名義が被相続人となっていることを避けるために,土地を相続した場合,相続登記を行う必要があります

こちらのページでは,被相続人がお亡くなりなった際の相続登記の流れと相続した土地の分配方法について説明します。

 

 

土地の相続登記までの流れ

相続登記は,

①土地の分配方法を協議する
②相続登記に必要な書類を準備する
②必要書類を法務局に提出する

という流れで行います。
以下、詳細をご説明します。

土地の分配方法を協議する

相続登記を行うためには,まず,相続人間で土地をどのように分配するのかを話し合う必要があります(分配方法の種類については後述します)。

現預金とは異なり,土地は相続時点ですでに利用している人がいたり,遠方に住んでおり対象の土地は必要ないと考えている人がいたりするため,どのように分配をするのかを決定するのは困難な場合が多いです。

また、協議自体は,相続人全員が集まって話し合いをする必要はなく,電話や手紙といった方法で行っても問題ありません。ただし,遺産分割協議の結果,法定相続分と異なる形で土地を相続することになった場合,相続登記を行う際に遺産分割協議書の提出が必要となります。

そのため,話し合いの結果,土地の分配方法が決まった場合,何らかの形で相続人全員の署名押印が入った遺産分割協議書を作成する必要があります

相続登記に必要な書類等を準備する

相続登記を行う際,必ず必要になる書類は次のとおりです。

  • ①登記事項証明書(登記簿謄本)
  • ②相続登記申請書
  • ③住所証明情報(住民票の写し,印鑑登録証明書,もしくは戸籍の附票)
  • ④固定資産税評価証明書

以上の書類に加えて,どのような形で相続登記をするかによって次の書類が必要となります。

⑴法定相続分に応じた共有名義で登記をする場合

⑤被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
⑥相続人全員の最新の戸籍謄本

⑵遺産分割協議の結果,法定相続分と異なる形での相続が決まった場合

⑤⑥に加えて,

⑦遺産分割協議書
⑧相続人全員の印鑑登録証明書

が必要となります。

書類を法務局に提出する

相続人間で土地の処分方法が決まり,必要書類も集まったら法務局へ出向き,書類の提出を行います。

相続した土地の分配方法

これまで相続で土地を取得した場合の相続登記の方法を説明してきました。

これからは,土地の分配方法の種類についてご説明します。

相続した土地の分配方法は,

  • ①現物分割
  • ②換価分割
  • ③代償分割
  • ④共有分割

の4つの方法が考えられます。それぞれの方法のメリット・デメリットについてご説明します。

現物分割

現物分割とは,不動産は配偶者に,現預金は長男に分配するという形で相続財産そのものを現物で特定の相続人が相続する方法になります。

最も広く一般的に行われている分割方法です。

メリット

現物分割のメリットは,現物をそのまま分けるので土地を含めた相続財産をシンプルかつ簡単に分割できるという点です。

デメリット

現物分割のデメリットは,現物をそのまま分けるため,相続財産を正確に等分することができず,分割の内容次第では相続人間で不公平感が生じる恐れがあるという点です。

換価分割

換価分割は,遺産を売却し,現金化した後,現金化した財産を相続人間で分割する方法をいいます。

メリット

現金で分配するため相続財産を相続人間で正確に等分することができるので,不公平感を伴うことなく分割することができます。

デメリット

動産や不動産を売却し,現金化の後,現金を分配するため,不動産を売却する際に,売却費用や譲渡所得税といった追加の費用が発生します。

また,土地を利用している相続人がいる場合,同相続人の同意が得られない可能性があります。同相続人の同意を得るためには,土地売却後の同相続人に対する補償の問題が生じ得ます。補償との関係で余計な費用が発生する可能性もあります。

売却が難しく,現金化が困難な土地の場合,同方法を選択することはできません。

代償分割

代償分割とは,相続財産を相続人の間で分割せず,特定の相続人が特定の遺産を取得し,その対価として,その者の財産を他の相続人に与える分割方法です。例えば,相続人が2名で,相続財産が価値5,000万円の土地しかない場合に,一方の相続人が土地を取得する代わりに,他方の相続人に自身の財産から2,500万円を支払うという場合が代償分割に当たります。

メリット

現金化する必要がないという点で,換価分割のようなデメリットが発生しません。

また,現物分割と異なり,相続財産を取得した相続人から他の相続人に対し,対価が支払われるため,不公平感が生じることも少ないです。

デメリット

相続財産を取得した相続人は,他の相続人に現金による代償金の支払いをする必要があるため,相続財産を取得する相続人に資力がない場合,代償分割を選択することができない点です。

共有分割

共有分割とは,土地を相続人全員で法定相続分に従い(若しくは合意ができた持分割合に従い),相続人間で共有する方法です。

メリット

大きなメリットとして遺産分割の手間が省けることです。分割ではなく共有のまま財産を取得するため,相続人間で不公平感を無くすことができます。

また,手続き的にも法務局に出向き相続登記を行うだけで足りるので簡便です。

デメリット

もっとも,共有分割は,相続した土地をだれの物にするのかを決めることなく,共有という現状を維持するだけなので,事実上,遺産分割を先送りにしていることと変わりません。

相続した土地を共有のままにした状態で,相続人に相続が発生した場合,権利関係がさらに複雑になるおそれがあり、相続問題が長期化する可能性があります。

相続した土地の売却方法(換価分割の例)

換価分割の場合,土地を売却し現金化する必要があります。

換価分割の場合,結局土地を売却するのだから相続登記をする必要がないと思われるかもしれません。しかし,法律上は,被相続人から相続人が不動産を相続により取得し,相続人が売主となって第三者に売却するという流れを経るため,換価分割の場合であっても相続登記をする必要があります。

相続する土地の名義書き換え

すでに述べた通り,換価分割の場合も相続登記をする必要があります。

その際,相続登記の名義を誰にするのかという問題が生じますが、結論としては誰名義にしても問題ありません

考えられる方法としては,①売却代金を取得する割合で各相続人に名義を割り当てる,②代表相続人を決定し,その代表相続人の単独名義にする方法が考えられます。

①は不動産売買の手続きが煩雑になるというデメリットがあり,②は売却が完了するまで固定資産税の請求が代表者のところのみに来るというデメリットがあります。

不動産屋への売却依頼

ご自身で売却可能であれば問題ありませんが,通常は不動産会社などへ売却依頼をします。どの程度の価格で売却可能なのかを判断するために複数の業者へ査定をしてもらう事が望ましいです。

また,どの程度であれば売却してもよいのかを相続人間で協議しておく必要もあります。

不動産譲渡税の支払い

換価分割は土地を売却した代金を分割する分割方法ですので,土地を売却した場合と同様,不動産譲渡税の問題が生じます。土地や建物を売却して得た利益に対して支払う税金を不動産譲渡税といいます。なお,売却益が不動産の取得費を下回ってしまった場合は課税されません。

換価分割の際の取得費は,被相続人の購入したときの価格で計算をします。もっとも,売買をした当事者がすでに死亡しているため,売買代金や取得費が判明しないも多々あります。取得費が判明しない場合は、売却益の5%相当額を取得費として計算することができます。

相続税の計算について

相続税は次の計算式で計算します。

「相続税額=(全ての財産額—基礎控除額)×相続税率」

基礎控除額の計算式は平成27年1月より、「3,000万円+600万円×相続人数」で計算されます。

相続登記をしないことのリスクとは?

相続登記をしない場合,登記をしない限りいつまでも名義が被相続人のままとなります。

一方,法律上は共有状態にあるという事態となります。

相続登記を行わなかったり,遺産分割協議を行わなかった場合,いざ土地を売却しようとしても売却できません。また,相続人にさらに相続が発生した場合,権利関係が非常に複雑になり,下の代になればなるほど,関係者が増え,権利関係と登記を一致させることが困難になります。

まとめ

土地の相続は,現金と異なり,相続人間で割合に応じて分割することは困難です。

また,「土地は必要ない。現金でほしい。」「実際に土地を利用しているので他の相続人に取得させたくない」と意見が割れることも多く,トラブルになる可能性も高いです。

 

土地の相続の際は,弁護士に相談いただくことをお勧めします。






    この記事の監修者

    監修者:西村啓聡

    弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

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    注力分野

    岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

    経歴

    東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。