遺遺産分割協議を弁護士が解説!やり直しはできる?期限はいつまで?

遺産分割協議とは、遺産相続人が集まって遺産の分配について決めることです。被相続人による遺言書がない場合は行う必要があります。

「いつまでに協議を終えなければならない」という期限は設けられていないため、相続人が自由に開始することができるのが特徴です。

しかし、相続税の申告期限が死後10ヶ月以内であるため、遺産分割協議はお葬式などが終わって落ち着いたタイミングですぐに行われることが一般的です。また、遺産分割協議で相続人同士での話がまとまった後に、協議をやり直すことは基本的にはできません。

遺産分割協議の進め方

「親が亡くなり兄弟間で遺産を分配することになった」「不動産の相続の方法がわからない」など、遺産分割協議の進め方がわからないという方は多くいらっしゃるのではないのでしょうか。

この項目では、遺産分割協議の進め方について詳しく解説します。

相続人の確定

遺産分割協議を実施する前に行わなければならないことは、相続人の確定です。

まず、死亡者の戸籍謄本を参照し、相続人にあたる人すべてを確認します。中には、「死亡者の戸籍謄本を見て初めて隠し子の存在を知った」ということがあるかもしれません。

遺産分割協議は、全ての相続人が参加しなければならないため、隠し子が発覚して面識がなかったとしても協議に呼ぶ必要があります。

また、相続人であっても「財産を相続する気がない」という場合は、遺産分割協議を始める前に相続放棄の手続きを家庭裁判所で行いましょう。相続放棄に関しては後ほど詳しくご説明します。

財産の確定

相続人を確定させたら、相続財産の調査を行い「どんな財産がどのくらいあるのか」ということを確定させます。

相続財産は、不動産、現金、有価証券、動産などだけでなく、被相続人が抱えていた借金や未払いの税金なども含まれるため、見落としがないようにしっかり調査しましょう。

なお、公正証書遺言が平成元年以降に作成されたものであれば、対象となる市区町村役所で検索することが可能なため、活用してみることをおすすめします。

遺産分割協議

相続人と相続財産を確定させた後、相続人全員を集めて遺産分割協議を行います。

各人が取得できる財産額と、相続を希望する財産額をそれぞれ比較し、他の相続人から反対意見がなければ協議上での相続が確定します。

協議内容は、相続人によって基本的には自由に決めて問題ありません。そのため、相続人全員が相続財産について合意することができれば、すべての相続財産について話し合う必要はなく、「預貯金の分割のみを協議し、不動産は長男へ」という協議も可能です。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書とは、「誰がどの遺産をどのくらいの割合で相続するのか」ということを記載した書類のことで、相続人全員の署名と押印が必要になります。

また、遺産分割協議書は公正証書にすることができます。公正証書は公証人が作成するため、協議書の信用性が高くなります。

土地や不動産の分割方法

土地や不動産を遺産として分割するためには、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法があります。

現物分割

現物分割とは、土地や不動産といった財産をそのまま相続する方法です。

たとえば、「不動産を長男が引き継ぎ、車を次男が相続する」といったように、相続人が対象の財産を相続するだけになるため、手続きが簡単です。

現物分割で相続する場合、すべての相続人の相続分を均等に分割することが難しいため、次のご説明する代償分割などの方法で不足分を補完します。

代償分割

代償分割とは、相続人が取得し、他の相続人に対して代償金を支払うことによって清算する遺産分割の方法です。

たとえば、「長女が土地と株式を相続する代わりに、長女が次女に対して代償金として4,000万円支払う」という場合が代償分割に該当します。

相続対象が現金の場合は、相続人同士で均等に分割することができますが、相続対象が土地や不動産の場合、均等に分けることが難しいでしょう。

代償分割が行われるのは、このように全ての相続人が納得した上で相続を行うことが難しい場合です。

換価分割

換価分割とは、土地や不動産など現物として残された相続財産を現金化し、その価値に応じて相続人同士で分割する方法です。

財産を現金化するため、相続人同士で均等な遺産分割ができるためトラブルが発生しにくいことがメリットとして挙げられます。

そのため、「不動産は相続したくない」「相続税の納税資金をどこから捻出しようか検討している」といった場合に換価分割がおすすめです。

共有分割

共有分割とは、一つの土地や不動産を複数の相続人で共有することです。遺産分割協議で共有分割の結論に至ったとしても、最終的には遺産分割する必要があるため、再び遺産分割協議を行うことが求められます。

不動産を共有すると、全ての所有者が同意しない限り、売却、建築、処分などが行えなくなります。遺産分割に期限は設けられていませんが、遺産分割協議が終わるまで相続人全員の共有財産の扱いになるのです。

また、相続税の申告期限までに遺産分割を終えていない場合は、税率の軽減特例の対象外となり、多額の相続税を支払うことになるため注意しましょう。

遺産分割協議で気をつけるポイント

遺産分割協議をスムーズに進めるために、これからご紹介するポイントを押さえておきましょう。

相続人は全員揃える

遺産分割協議は、相続人全員が参加する必要があります。

相続人全員が参加していない状態の協議で合意に至ったとしても、合意内容は無効となるため、遺産分割協議を行う際は必ず相続人を全員揃えましょう。

死後10ヶ月以内に協議を終えることを目指す

相続税の申告と納税期限は死後10ヶ月以内に実施することを定められています。そのため、これに伴って遺産分割協議も10ヶ月以内に終えるようにしましょう。

死後10ヶ月以内に遺産分割協議と相続税申告を済ませていない場合、軽減特例が適用されていない状態の相続税を納付することが求められます。また、死亡者の預金の引き出しが制限されるため、遺産分割協議は早めに終わらせることをおすすめします。

相続税を考慮して遺産分割をする

相続税を考慮しないまま遺産分割協議を進めてしまうと、合意後になって「相続税ってこんなに費用がかかるのか」といった事態になってしまう可能性があります。

こうしたことを防ぐために、遺産の総額を算出した上で相続税がどのくらいかかるのか把握しておくことが求められます。

遺産を相続しない場合は相続放棄をする

相続財産には現金や不動産だけでなく、死亡者が残した借金も含まれます。

遺産分割協議を行った上で、「何も相続しない」と決まった相続人であったとしても、死亡者が残した借金は相続人全員が平等に引き継がれることになります。

相続放棄を希望し、他に相続人がいる場合は、死亡から3ヶ月以内に所轄の家庭裁判所への申請が必要になり、家庭裁判所から相続放棄が認められた場合は、他の相続人に拒否した分の相続権が移譲されます。

土地や不動産は共有しない

土地や不動産を相続する場合、遺産分割協議を行っても結論が出ず、そのまま複数の相続人で共有することがあります。

それぞれの共有者には「共有持分割合」が認められますが、共有物件は単独で活用や処分などをする際には全共有者の合意が必要です。そのため、遺産分割協議で「話がまとまらない」という理由だけで、土地や不動産を共有することはやめましょう。

当事者同士で話がまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることも一つの手です。

財産の変動で対応できる内容にする

株式や投資信託といった価値が変動する遺産を相続する場合、「長女には〇〇万円」といったように、限定的かつ具体的な金額を指定することは避けましょう。

遺産分割の方法は金額や割合で指定することが可能ですが、金額指定をした場合「遺産を引き継いだら株式や投資信託の価値が落ちていた」といったことが発生するリスクが考えられます。

また、相続する現金の金額指定を行っていた場合、入院代や葬儀代などで口座内の預金額が変動しており、解約時には想定以下の額しか残っていないことがあります。

こうした場合、「当初定めていた金額の不足分をどこから捻出するのか」ということを再度協議する必要があるため、非常に手間がかかってしまいます。

遺産分割協議で合意に至らなかった場合は?

相続人全員で協議内容を合意に至らせることが理想的ですが、中には意見が割れて合意に至らないこともあるでしょう。

遺産分割協議で合意に至らなかった場合は、弁護士に依頼して遺産分割協議に立ち会ってもらうことがおすすめです。それでも話がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に申し立てて、調停分割や審判分割で遺産を分割することになります。

家庭裁判所が介入する遺産分割調停では、調停委員が各相続人から意見を聞いたり、裁判官から解決策を提示されたりしたものをまとめて話し合いが進められます。

調停で話し合いがまとまらなかった際は、審判手続きに移行し、家庭裁判所が分割方法を決定することになるため、協議が終結するまで長い期間を要することになるでしょう。

また、遺産分割協議に関する事項で家庭裁判所に申し立てをする際は、死亡者が亡くなる直前まで居住していた地域の家庭裁判所が対象です。

弁護士に依頼して遺産分割協議の早期終結を目指しましょう

遺産分割協議は事前に準備しておくことが多くあります。また、協議のやり直しや相続人同士でのもめごとを防ぐためにも、本記事でご紹介したポイントを押さえて協議を進めていきましょう。

遺産分割協議でトラブルになりそうな場合は、相続人同士で話しても結論がなかなか出ないことが一般的なため、遺産分割協議をスムーズに終わらせるために、早めに弁護士に相談することをおすすめします。






    この記事の監修者

    監修者:西村啓聡

    弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

    西村写真

    注力分野

    岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

    経歴

    東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。