泣き寝入りしない!遺産を使い込まれた時の対処法や時効について岡山の弁護士が解説
国民の平均寿命が延びてきている今日,高齢の被相続人が施設に入所している場合や自宅で生活していても判断能力が低下してきた場合など、被相続人本人による金銭の管理が難しくなってきたとき、被相続人に代わって配偶者や子,その他近親者が預貯金を管理するということは珍しくありません。
そのため,被相続人の生前に、被相続人の近くにいた相続人が、無断または,被相続人の承諾を得て預金を引き出してしまうことはよく起こり得ることです。
金銭の管理を任された人が、被相続人のために金銭使っていればよいのですが、時には無断で金銭を消費したり、着服して金銭を隠してしまうケースがあります。
また,きちんと管理をしていたにも拘わらず,相続開始後,相続人から無断使用を疑われてしまうケースもあります。
この記事では,預金の使い込みを追求したい人,預金の使い込みを追及された人それぞれについて,弁護士ができることを説明します。
目次
預金の使い込みを追及したい方へ
まず、預金財産の使い込みを追及したい場合、具体的にどのように追及できるのか、説明していきたいと思います。
預貯金の使い込みが発覚した場合に何ができるのか
このような不正な金銭の引き出しは窃盗や横領にあたる場合もあり、警察に相談すればいいのではないかと思われる人もいるかもしれません。しかし,多くの場合,家族間の問題であることや、親子間の窃盗や横領は刑が免除されることになっているので(刑法244条、刑法255条など)、なかなか警察は捜査をしないのが実情です。
そこで、使い込みをされてしまった他の相続人は、使い込みをした相続人に対し、不当に引き出された金銭の返還を請求していくことになります。
追及する際必要な資料について
使い込みを追求する場合,預金が引き出されていることと,その預金の引き出しが被相続人本人の意思に基づかない第三者の不当な引出しであることを証明する必要があります。
預金が引き出されていることを証明するために,まず,金融機関に依頼し,取引履歴を収集することになります。
取り寄せ可能な取引履歴は,金融機関によって異なりますが,過去10年程度の取引履を取り寄せることが可能です。
次に,第三者により不当な引出しを証明する資料としては,金融機関から払戻請求書や預金解約申込書の写しなども証拠になります。
他にも,当時,被相続人が預金の引き出しができるような状況になかったことを示す資料として,被相続人の医療記録,介護記録,介護認定記録も重要な資料となります。これらの資料から,問題の引き出し時の被相続人の所在場所,被相続人の財産管理能力を把握することができます。
返還請求の手続について
預金の使い込みの時期・金額が特定できる場合,まずは相続人間での話し合いや遺産分割調停で使い込みの使途についての説明を引き出した人に求めます。
当該相続人が,使い込みの使途を説明し,使い込み金の存在を前提とした話し合いや調停ができるのであれば,その中で解決をします。
一方,使途の説明がない場合や,使途を容認できない場合,遺産分割協議や調停での解決は難しいため,訴訟を検討することになります。
預金の使い込みを追求されてしまった方へ
次に、預金財産の使い込みを追求された場合に何ができるのかを説明していきたいと思います。
預貯金の使い込みが見つかった場合に何ができるのか
預貯金の使い込みが見つかった場合,預貯金を使っていた人はその使途が被相続人のために使用したものであり不当な引出しではないことや,被相続人から生前に贈与を受けたものであること等を説明する必要があります。
使い込みを否定する際に必要な資料について
使途が被相続人のために使用したことや,被相続人から生前に贈与を受けたものであることの説明をするためには,被相続人のために使った金銭に関する領収書,被相続人が相続人に金銭の利用を認めたことが記載された手紙,メールが重要な資料となります。
また,そもそも引き出したのがご自身でない場合は,払戻請求書の開示を銀行に求め,その筆跡が自分とは異なることを主張することになります。
他にも,引出しを行っている銀行やATMの所在が,ご自身の活動範囲と異なっている場合もあるので,取引明細書も重要な手掛かりとなります。
教育資金や住宅資金の生前贈与を受けた場合について
生前贈与を受けたと主張する場合,仮にその事実が認められれば使い込みとの関係では正当性が認められ,他の相続人からの返還に応じる必要はなくなります。
しかし,遺産分割との関係では,後の遺産分割協議ないし調停で特別受益として扱われることになります。
遺産の使い込みにおける時効について
不当な使い込みに対する返還請求の根拠は,不当利得ないし不法行為となります。
不当利得か不法行為における一番の違いは時効となります。前者は行為の日から10年、後者は行為を知ったときから3年で時効にかかります。立証の困難さという点では大きな違いが出ないことが多いです。
不法行為構成による場合,10年以上前の引き出しについても返還の対象となり得ます。
故人の通院などにのみ預金を引き出していたにも関わらず使い込みの追求を受けてしまった事例も併せてご覧ください。
遺産の使い込み問題を弁護士に相談するメリット
以上、預金財産の使い込みを追求したい方、追求された方への対応方法を説明してきましたが、これらの問題は弁護士に相談することでスムーズに解決することが可能です。
弁護士が代理人として対応するためスムーズな解決が図れる
使い込みに関する案件では,引き出しの数が膨大であったり,過去の事でありかつ被相続人が死亡しているため,間接的な事実から引出しの理由等を推認する他なく,証拠の収集や事実の確認が難しい場合があります。
しかし,弁護士に依頼をすることで,医療機関からの資料の収集が容易になったり,引出金の精査等が十分に行えます。
結果,事件の概要を把握することができ,今後の見通しや相手とどのように交渉を進めていけばよいかを明らかにすることができます。
返還の交渉や訴訟を対応できる
相続人間で使途不明金の問題が生じた場合,各当事者は疑心暗鬼になっており,十分な交渉ができない場合があります。弁護士に依頼をし,客観証拠を収集のうえ代理人として交渉をすることで,当事者間での話し合いがスムーズにいく可能性があります。
また,交渉や訴訟における窓口がすべて弁護士となるため,相手方と直接交渉する心的負担や,訴訟対応における事務的負担を軽減することができます。
その後遺産分割に関しての対応も可能
協議,調停,裁判いずれの場合であっても,使途不明金に関する話について決着がついた場合,その後,使途不明金に関する判断を前提として遺産分割についての対応をする必要があります。
弁護士に依頼をすることで,使途不明金に関する紛争のみならず,後続する遺産分割についても引き続き解決に当たることが可能です。
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