泣き寝入りしない!遺産を使い込まれた時の対処法や時効について岡山の弁護士が解説

国民の平均寿命が延びてきている今日,高齢の被相続人が施設に入所している場合や自宅で生活していても判断能力が低下してきた場合など、被相続人本人による金銭の管理が難しくなってきたとき、被相続人に代わって配偶者や子,その他近親者が預貯金を管理するということは珍しくありません。

そのため,被相続人の生前に、被相続人の近くにいた相続人が、無断または,被相続人の承諾を得て預金を引き出してしまうことはよく起こり得ることです。

金銭の管理を任された人が、被相続人のために金銭使っていればよいのですが、時には無断で金銭を消費したり、着服して金銭を隠してしまうケースがあります。

また,きちんと管理をしていたにも拘わらず,相続開始後,相続人から無断使用を疑われてしまうケースもあります。

この記事では,預金の使い込みを追求したい人,預金の使い込みを追及された人それぞれについて,弁護士ができることを説明します。

遺産の使い込みってどこから?ケースと対処法

遺産の使い込みとは

「遺産の使い込み」とは、親が生前に築いた財産を、相続人の一部が正当な手続きを経ずに勝手に処分・使用してしまう行為を指します。典型的な例としては、親の預貯金を引き出して私的に使用する、不動産を無断で売却する、生命保険を解約して現金化するなどがあります。特に親が認知症を患っていた場合や、財産管理を任されていた相続人がその立場を悪用するケースが多発しています。

遺産の使い込みのよくあるケース

親の預貯金を勝手に使う

親のキャッシュカードや通帳を使い、本人の了承なく現金を引き出すケースです。特に、親が入院や施設に入っている場合、他の家族が気づかないうちに使い込みが行われることが少なくありません。

親の生命保険を勝手に解約する

親が加入していた生命保険を、代理人として手続きをしてしまい、解約返戻金を受け取るケースです。保険金は相続財産ではなく、受取人固有の財産になるため、解約時に不正が行われることがあります。

親の不動産や車等を売却する

親が所有する不動産や車を、本人の同意なしに勝手に売却し、売却代金を使ってしまう事例です。特に、不動産の場合、売買契約の手続きがあるため、発覚しにくいことがあります。

親が持っているアパートや土地の賃料を横領してしまう

親が所有する賃貸物件の家賃収入を、相続人の一人が独占してしまうケースです。本来、賃料収入も相続財産の一部として分配されるべきですが、管理を任されている相続人が横領してしまうことがあります。

「使い込み」は窃盗や横領で処罰できません

遺産の使い込みは、一般的に「窃盗」や「横領」とは異なります。遺産は相続人全員の共有財産であり、特定の相続人が勝手に使ってしまった場合でも、法的には民事上の問題として扱われることがほとんどです。そのため、警察に訴えても刑事事件として処罰されることは難しく、基本的には民事訴訟を通じて解決することになります。

まずは弁護士に相談して対処しましょう

遺産の使い込みが疑われる場合、まずは弁護士に相談することが重要です。証拠を集め、法的手続きを進めるためのアドバイスを受けることができます。相続人同士の話し合いでは解決が難しいケースも多いため、専門家のサポートを受けることで、適切な解決策を見つけやすくなります。

 

預金の使い込みを追及したい方へ

まず、預金財産の使い込みを追及したい場合、具体的にどのように追及できるのか、説明していきたいと思います。

預貯金の使い込みが発覚した場合に何ができるのか

このような不正な金銭の引き出しは窃盗や横領にあたる場合もあり、警察に相談すればいいのではないかと思われる人もいるかもしれません。しかし,多くの場合,家族間の問題であることや、親子間の窃盗や横領は刑が免除されることになっているので(刑法244条、刑法255条など)、なかなか警察は捜査をしないのが実情です。

そこで、使い込みをされてしまった他の相続人は、使い込みをした相続人に対し、不当に引き出された金銭の返還を請求していくことになります。

追及する際必要な資料について

使い込みを追求する場合,預金が引き出されていることと,その預金の引き出しが被相続人本人の意思に基づかない第三者の不当な引出しであることを証明する必要があります。

預金が引き出されていることを証明するために,まず,金融機関に依頼し,取引履歴を収集することになります。

取り寄せ可能な取引履歴は,金融機関によって異なりますが,過去10年程度の取引履歴を取り寄せることが可能です。

次に,第三者により不当な引出しを証明する資料としては,金融機関から払戻請求書や預金解約申込書の写しなども証拠になります。

他にも,当時,被相続人が預金の引き出しができるような状況になかったことを示す資料として,被相続人の医療記録,介護記録,介護認定記録も重要な資料となります。これらの資料から,問題の引き出し時の被相続人の所在場所,被相続人の財産管理能力を把握することができます。

 

返還請求の手続について

預金の使い込みの時期・金額が特定できる場合,まずは相続人間での話し合いや遺産分割調停で使い込みの使途についての説明を引き出した人に求めます。

当該相続人が,使い込みの使途を説明し,使い込み金の存在を前提とした話し合いや調停ができるのであれば,その中で解決をします。

一方,使途の説明がない場合や,使途を容認できない場合,遺産分割協議や調停での解決は難しいため,訴訟を検討することになります。

預金の使い込みを追求されてしまった方へ

次に、預金財産の使い込みを追求された場合に何ができるのかを説明していきたいと思います。

預貯金の使い込みが見つかった場合に何ができるのか

預貯金の使い込みが見つかった場合,預貯金を使っていた人はその使途が被相続人のために使用したものであり不当な引出しではないことや,被相続人から生前に贈与を受けたものであること等を説明する必要があります。

使い込みを否定する際に必要な資料について

使途が被相続人のために使用したことや,被相続人から生前に贈与を受けたものであることの説明をするためには,被相続人のために使った金銭に関する領収書,被相続人が相続人に金銭の利用を認めたことが記載された手紙,メールが重要な資料となります。

また,そもそも引き出したのがご自身でない場合は,払戻請求書の開示を銀行に求め,その筆跡が自分とは異なることを主張することになります。

他にも,引出しを行っている銀行やATMの所在が,ご自身の活動範囲と異なっている場合もあるので,取引明細書も重要な手掛かりとなります。

教育資金や住宅資金の生前贈与を受けた場合について

生前贈与を受けたと主張する場合,仮にその事実が認められれば使い込みとの関係では正当性が認められ,他の相続人からの返還に応じる必要はなくなります。

しかし,遺産分割との関係では,後の遺産分割協議ないし調停で特別受益として扱われることになります。 

使い込まれた遺産を取り戻せるケース、取り戻せないケース

勝手に使い込まれてしまった財産を取り戻せる可能性があるケース

以下のようなケースでは、使い込まれた遺産を取り戻せる可能性があります。証拠をしっかりと揃えた上で、法的な手続きを進めることが重要です。

銀行の取引履歴が明確に残っている場合

被相続人(亡くなった方)の預金口座の取引履歴を確認し、不自然な出金がある場合は、その記録が証拠となります。特に、高額な引き出しが短期間に行われている、または被相続人が入院中・認知症で判断能力がなかった時期に多額の出金がされている場合は、不正利用の可能性が高くなります。

株式や金融資産の不正な処分があった場合

被相続人が所有していた株式などの取引明細書を確認し、相続人の同意なしに勝手に売却されていないか調べることができます。適正な売却手続きがされていない場合は、その売却を無効にし、財産を取り戻すことが可能です。

不動産の売却が違法に行われた場合

親が所有していた不動産の売買契約書を確認し、相続人全員の同意がないまま勝手に売却されている場合は、契約を無効にできる可能性があります。特に、名義変更が勝手に行われた場合売却代金が本来の相続人に適切に分配されていない場合は、弁護士を通じて法的措置を取ることができます。

賃料収入の横領が発覚した場合

親が所有していたアパートや土地の**賃料の入金記録(通帳・取引明細書)**を確認し、本来被相続人の口座に入るはずの賃料が、特定の相続人の口座に振り込まれている場合は、不正取得の証拠になります。この場合、使い込まれた賃料の返還請求が可能です。

被相続人が判断能力を失っていた時期に不正な処分が行われた場合

介護記録、入院記録、認知症の診断書などを確認し、被相続人が判断能力を失っていた時期に財産が勝手に処分されていた場合、契約や出金の無効を主張できる可能性があります。特に、高齢の親が認知症を患っている間に、多額の現金が引き出されたり、不動産が勝手に売却されている場合は、不正行為として認められる可能性が高くなります。

証拠が揃っていれば、弁護士を通じて法的な手続きを進め、遺産の返還請求を行うことが可能です。

取り戻すことが難しいケース

既に時効が成立してしまっている

遺産の使い込みに関する請求には時効があり、一般的には10年が経過すると請求権が消滅してしまいます。時効が成立してしまうと、たとえ不正が明らかでも法的に取り戻すことは困難になります。

相手にお金がなく、返還できない

使い込みをした相続人が既にお金を使い果たしてしまっている場合、たとえ裁判で勝訴しても実際に返還を受けることができない可能性があります。相手に資産がない場合は、強制執行を行っても回収が難しくなるため、事前に財産状況を確認することが重要です。

遺産の使い込みにおける時効について

不当な使い込みに対する返還請求の根拠は,不当利得ないし不法行為となります。

不当利得か不法行為における一番の違いは時効となります。前者は行為の日から10年、後者は行為を知ったときから3年で時効にかかります。立証の困難さという点では大きな違いが出ないことが多いです。

不法行為構成による場合,10年以上前の引き出しについても返還の対象となり得ます。

故人の通院などにのみ預金を引き出していたにも関わらず使い込みの追求を受けてしまった事例も併せてご覧ください。

遺産の使い込み問題を弁護士に相談するメリット

以上、預金財産の使い込みを追求したい方、追求された方への対応方法を説明してきましたが、これらの問題は弁護士に相談することでスムーズに解決することが可能です。

使い込まれた遺産を取り戻せるかわかる

弁護士に相談することで、使い込まれた遺産が法的に取り戻せるかどうかを判断してもらえます。証拠が不十分な場合でも、どのように証拠を集めるべきか、どのような法的手続きが可能かを具体的にアドバイスしてもらえます。また、交渉が難航した場合は、裁判を視野に入れた対応も可能です。

弁護士のサポートを受けることで、相続トラブルを適切に解決し、正当な相続分を確保することができます。相続に関する問題でお困りの方は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

弁護士が代理人として対応するためスムーズな解決が図れる

使い込みに関する案件では,引き出しの数が膨大であったり,過去の事でありかつ被相続人が死亡しているため,間接的な事実から引出しの理由等を推認する他なく,証拠の収集や事実の確認が難しい場合があります。

しかし,弁護士に依頼をすることで,医療機関からの資料の収集が容易になったり,引出金の精査等が十分に行えます。

結果,事件の概要を把握することができ,今後の見通しや相手とどのように交渉を進めていけばよいかを明らかにすることができます。

返還の交渉や訴訟を対応できる

相続人間で使途不明金の問題が生じた場合,各当事者は疑心暗鬼になっており,十分な交渉ができない場合があります。弁護士に依頼をし,客観証拠を収集のうえ代理人として交渉をすることで,当事者間での話し合いがスムーズにいく可能性があります。

また,交渉や訴訟における窓口がすべて弁護士となるため,相手方と直接交渉する心的負担や,訴訟対応における事務的負担を軽減することができます。

遺産分割や相続のお悩みは西村綜合法律事務所へご相談ください

協議,調停,裁判いずれの場合であっても,使途不明金に関する話について決着がついた場合,その後,使途不明金に関する判断を前提として遺産分割についての対応をする必要があります。

弁護士に依頼をすることで,使途不明金に関する紛争のみならず,後続する遺産分割についても引き続き解決に当たることが可能です。

 

西村綜合法律事務所では岡山にお住まいの皆様向けに無料相談を実施中です。遠方の方、事情がありご来所が難しい方向けにオンライン面談も行っておりますので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

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この記事の監修者

監修者:西村啓聡

弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

西村写真

注力分野

岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

経歴

東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。