遺産・相続財産の使い込みを疑われたら!相続トラブルの対処法と進め方を解説【弁護士監修】

本記事では、「遺産の使い込みをしていないのに指摘されて困っている」「正当な支出だったが疑われている」といったご相談者様が、法的に有利に状況を整理し、適切な対応をとるための情報を解説いたします。

不当利得、遺留分侵害額請求、横領といった法的構成の違いや、よくあるトラブルの実例、証拠の扱い方、今後の対応戦略までを一貫して解説していきます。遺産相続においてご自身の正当性を守るため、ぜひご参考ください。

目次

遺産の使い込みを指摘されたとき、まず何をすべきか

突然の指摘に戸惑っている方へ

まず前提として、遺産の使い込みを疑われてしまうケースは少なくありません。

しかし重要なのは、感情的にならずに事実関係を整理することです。指摘があった段階では、相手の誤解や法的知識の不足に基づく主張であることも少なくありません。

まずは冷静に対応し、書面や証拠をもとに、自身の行動が正当であったことを裏付けられるかどうかを確認してください。

「自分は正当な取得のつもりだった」というケースは多い

実際のご相談では、「親のお金を自分が管理していた」「生活費として使った」「介護のために使った」といった背景がほとんどです。このようなケースでは、本人に悪意はないものの、他の相続人が納得していないという構図です。

法律的には、被相続人の意思や委任の有無、費用の内容などが問題となります。主観的な「正当性」だけでなく、法的な根拠に基づく説明が求められます。

身内とのトラブルを大ごとにしないために冷静な対応が重要

相手が家族や兄弟である場合、感情的な言い合いや非難の応酬になりがちです。しかし、相続トラブルは長期化・泥沼化するほど金銭的・精神的負担が大きくなります。

まずは書面や記録を整理し、相手の主張に対してどのように対応すべきか、弁護士とともに冷静に対処方法を検討することが重要です。

そもそも「遺産の使い込み」とは何を指すのか

不当利得・横領・遺留分侵害との違い

遺産の使い込みを巡るトラブルでは、法律上の構成として「不当利得返還請求」「遺留分侵害額請求」「横領罪」などが論点となります。

不当利得は、正当な理由なく利益を得た場合の返還義務を指し、遺留分侵害は相続人の最低限の取り分を侵害した場合に問題となります。横領は刑事上の問題です。相手がどの主張をしているかを正しく把握し、適切な対応を検討することが大切です。

介護中の引き出しや立替支払いは使い込みになるのか?

介護をしていたご相談者様が、入院費や施設費用、生活費を被相続人の預金から支払っていた場合、それ自体は不正とは限りません。

ただし、他の相続人が納得していない場合、「使い込み」として追及される可能性があります。どのような目的でいくら使ったのかを明らかにし、領収書や振込履歴を残しておくことが重要です。

口座の名義変更や共同名義の財産はどう扱われる?

被相続人が生前に預金を共有名義にしたり、財産を譲渡した場合、それが「生前贈与」なのか「管理目的」なのかによって判断が分かれます。

名義変更=贈与と見なされるわけではなく、実態や背景事情を総合的に検討する必要があります。ご自身の関与が管理目的だったことを証明できるよう準備することが大切です。

遺産を使った理由がある場合、それは「使い込み」になるのか

介護費・入院費・生活費を立て替えた場合

自費で立て替えた介護費用や医療費を、後から被相続人の預金から精算することは、一般的には「使い込み」とは言えません。

ただし、領収書や記録が不十分であると、「不正に引き出したのでは」と疑われるリスクがあります。事前の同意や、支出の必要性を示す証拠をもとに、正当な立替であることを示す必要があります。

被相続人の生前の意思があったと主張する場合

「親が自由に使っていいと言っていた」「子どもに譲ると言っていた」などの主張はよくありますが、証拠がなければ法的効力は限定的です。

生前の意思を示すメモや音声、第三者の証言などがない場合は、相続人間の主張がぶつかるだけになります。贈与や委任があったことを立証する手段を準備すべきです。

「任されていた」「了承を得ていた」と主張する際の注意点

通帳や印鑑を預かっていた場合、「管理を任されていた」と主張することはよくあります。

しかし、どのような範囲で何を任されていたのかが問題になるパターンが多いです。

管理権限を超えた支出や名義変更などは、無断の処分と見なされることもあります。自分の行動が法的に正当だったかどうか、冷静に検討する必要があります。

相手から返還請求や遺留分侵害額請求をされた場合の対応策

遺留分侵害額請求とは?仕組みと対応の基本

遺留分とは、法定相続人が最低限保障される財産の取り分です。

これを下回る相続内容となった場合、他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受けることがあります。具体的にどのような財産が対象になるのか、贈与や引き出しがどこまで影響するのかが重要な論点といえます。

弁護士を通じて主張を整理し、交渉に臨む重要性

相手から請求書や内容証明が届いた場合、無視せずに弁護士に相談すべきです。

事実関係を整理し、反論可能な点を法的に組み立てることで、不当な請求や過剰な主張を抑制できます。また、交渉の場では弁護士が間に入ることで、冷静かつ法的に正しい議論が行われやすくなります。

返還義務があるとされた場合、支払方法や合意内容をどう決めるか

仮に返還すべき金額があるとされた場合でも、全額一括で支払う必要があるとは限りません。

分割払いや代償分割、相続全体の調整を踏まえた和解も可能です。交渉段階での合意内容を文書化し、将来的な争いの火種を残さないことが重要です。

法的に有利に進めるために押さえておきたい3つの視点

立証責任は誰にある?相手の主張の精査が重要

民事のトラブルにおいては、基本的に「主張する側」に立証責任があります。

つまり、遺産の使い込みを主張する側が、「どの財産が、どのように、誰に使い込まれたか」を具体的に立証する必要があります。ご相談者様としては、相手の主張に具体性があるか、証拠の裏付けがあるかを冷静に確認し、不明確な点は毅然と指摘すべきです。

安易に謝罪したり、あいまいな対応をとると、不利な印象を与えることにもつながります。

証拠として使えるものは何か?領収書・通帳・メモなど

使途の正当性を説明するには、具体的な証拠の提示が極めて重要です。

たとえば、領収書、通帳の履歴、家計簿、被相続人とのメッセージ履歴、介護サービスの契約書、銀行引き出し時の伝票、施設費の請求書などが該当します。

また、家族会議の記録や、親族からの委任メモなども、客観的な資料として有効です。証拠は「整理」と「一貫性」が重要です。弁護士に相談しながら構築していくことで、主張の説得力が増します。

「家族の感情論」と「法的な理屈」を切り分けて考える

遺産トラブルでは、「長男だから優遇されて当然」「介護してもらった感謝の気持ちで渡した」など、感情や道義的観点が論点に持ち込まれがちです。

しかし、調停や裁判では「法律に基づいた証拠と主張」こそが重視されます。感情論に巻き込まれてしまうと、論点がぶれたり、余計な対立が深まる危険があります。

弁護士とともに、法的に筋の通った方針を固めることが、結果的に早期解決にもつながります。

トラブルを長期化させないために弁護士に相談すべき理由

感情の対立を避け、法的論点だけに集中できる

相続は「家族関係」と「お金の問題」が絡み合うため、当事者だけでの解決は非常に困難です。

感情的なやりとりが続くことで、交渉が迷走し、関係がさらに悪化することもあります。弁護士が間に入ることで、やりとりを法的論点に限定し、冷静かつ建設的な話し合いを可能にします。

これにより、相手の過剰な主張や無理な要求にも毅然と対応することができます。

調停や裁判になったときの備えができる

交渉が決裂した場合、家庭裁判所での調停や訴訟へ進む可能性もあります。

こうした事態に備えて、初期段階から弁護士の助言を受けておくことが重要です。事前に証拠を整理し、主張の構成を整えておけば、有利な立場を築きやすくなります。

また、弁護士が代理人として調停に出席することで、ご相談者様の精神的負担も大幅に軽減されます。

相続全体の利益を踏まえた「着地点」を見出しやすくなる

トラブルの中で、「とにかく勝ちたい」「絶対に納得できない」と感情的になると、解決が遠ざかってしまう可能性が高いです。

弁護士は、相続全体を見通し、法的かつ現実的な「落としどころ」を探ります。ご相談者様にとって最終的に有利な結果を得るためには、主張すべき点と妥協すべき点の線引きが不可欠です。交渉の過程で優位に立つためにも、第三者の専門的視点が重要となります。

当事務所の遺産トラブル対応の特徴とサポート内容

不当利得・遺留分請求に精通した弁護士が対応

当事務所では、相続問題の中でも特に「使い込み」「不当利得」「遺留分侵害」といったトラブルに注力しています。

これらの問題は感情面だけでなく、財産評価や契約書類、税務など多角的な検討が必要なため、実績と経験が問われます。当事務所では、これまで多数の遺産トラブルを解決に導いてきた弁護士が対応いたします。

証拠整理・交渉・調停対応を一貫して任せられる

証拠の収集・整理から、相手方との交渉、調停・審判の対応までをワンストップでご依頼いただけます。途中で方針がぶれることなく、戦略的に案件を進めることが可能です。

また、感情的な応酬を避けることで、家族関係の悪化も最小限に抑えることができます。初動から一貫した対応を取ることで、有利な展開を図ることが可能です。

初回相談無料・オンライン相談にも対応しています

岡山に密着した事務所として、地域の事情や親族関係を踏まえたきめ細やかな対応が可能です。初回相談は無料で行っており、遠方の方や外出が難しい方にはオンライン相談もご利用いただけます。

必要な資料や相談準備についても事前にご案内いたしますので、安心してご相談いただけます。

 

相続財産の使い込みトラブルは西村綜合法律事務所へご相談ください

「遺産を使ったつもりはなかった」「親のためにした行動が疑われている」といったお悩みは、誰にでも起こり得る問題です。しかし、相続問題においては感情よりも法的な整理が求められます。重要なのは、正当性を証明できるか、相手の主張に反論できるか、そして将来にわたって不利な状況を回避できるかという点です。

早めに弁護士の助言を得ることで、トラブルの長期化や誤った対応を防ぐことができます。「自分の行動は正しかった」と信じている方ほど、法的な視点での裏付けが必要です。ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。

この記事の監修者

監修者:西村啓聡

弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士

西村写真

注力分野

岡山エリアでの相続分野(遺産分割・遺留分侵害額請求など多数の相談実績)

経歴

東京都内の法律事務所での勤務を経て、岡山県に弁護士法人西村綜合法律事務所を創立。県内を中心に年間約80件の相談を受けており、岡山エリアの相続に強い弁護士として活動。地域に根ざし皆様の拠り所となれるような法律事務所を目指している。